成田山・額堂

成田山公園の紅葉
「成田のお不動さま」の愛称で親しまれている成田山新勝寺は、真言宗智
山派の大本山で、関東三不動の一つです。今回は、秋の成田山を散歩し
ながら、「額堂」の尾垂木(おだるき)を見学してみましょう。

成田山新勝寺の額堂
成田山の額堂は国指定重要文化財です。文久元年(1861年)建立です。
御信徒から奉納された額や絵馬をかける建物で、近世における庶民信仰
を表す代表建築の一つに数えられています。奉納された額を見ているだけ
でも様々な組織や団体があり、なかなか面白いと思います。

鯉の彫刻
額堂で一番目を見張るのはやはり様々な彫刻ではないでしょうか。この鯉
の彫刻は様々なモチーフの中でも実際の生き物が彫られているという点で
は珍しい方なのかもしれません。魚の目や鱗の木目との調和が見事です。

鳥と麒麟の彫刻
左側の鳥は鳳凰でしょうか?キンケイという鳥にも似ています。嘴が長くな
いので鶴ではないと思うのですが、松の木に止まっているとすれば鶴をモチ
ーフにしているのかも知れませんね。しかし、実際は鶴は木に止まる事がで
きないそうで、昔の人は木に止まっているコウノトリを鶴だと思って日本画の
題材にしたようです。右側は麒麟だと思います。こちらは架空の動物ですね。
鳥や麒麟も見事ですが、その周囲をとりまく木々や雲の意匠に匠の技が光
ります。

虎と竜の彫刻
左側の虎は竹をくわえています。躍動感あふれるダイナミックな彫刻ですね。
後ろに見える鱗は奉納された額の縁をとりまく竜の鱗です。右側は雲間から
顔をのぞかせた竜です。いやぁ、それにしてもセ・リーグの首位争いは熾烈
でしたね。虎と竜のバトルは我々「虎ファン」を最後までやきもきさせました。
結局2005年のセ・リーグは「虎」が見事に制覇しました。しかし、まさか・・・
「カモメ」にあれだけコテンパンにやられるとは・・・(T_T)・・・すいません、
「幹事長」どうやらまだ引きずっていますね・・・そっとしておいてあげましょう。

尾垂木(おだるき)の竜の彫刻
額堂の尾垂木の竜の彫刻です。尾垂木とは、神社仏閣等に代表される建
築の際、屋根を支えている組み物の途中に斜めに突き出して斗を載せてい
る部分をさします。尾垂木の断面が四角形なのは和様の特徴で、唐様では
五角形で、江戸以降に動物の彫刻が付くようになったそうです。竜の他には
象や獅子等、仏教や神話等で高貴とされる動物が主に彫られるようです。
こちらの写真は、左右どちらも竜の彫刻のようですが、生命力あふれる見
事な彫刻に圧倒されます。「後藤勇次郎経慶」という方の作品だそうです。
左側の竜の眼には玉のようなものがはめ込まれていますが、右側の竜の
眼はそれが外れてしまったものと思われますが、個人的にはない方がいい
かな?なんて思いますが、皆さんはいかがでしょうか。

また、竜を取り巻く雲の意匠も見事ですね。匠の「技」が随所に光ります。
私は神社やお寺の尾垂木の彫刻が好きで、神社仏閣に訪れると建物の尾
垂木に注目するのですが、成田山の額堂の尾垂木はとても完成度が高いと
思います。私の写真ではうまく伝わりませんが、匠の「技」をぜひご覧になっ
てみてはいかがでしょうか。

竜の彫刻
こちらの竜の彫刻は、額堂の尾垂木の竜の彫刻の全体像です。雲の意匠が見事ですね。

水琴窟
成田山書道美術館の一角にある水琴窟です。上の竹から水が流れてきて、
石の上部に水が溜まり、それが更に下方へと流れて地下の瓶に雫が落ち、
それが反響して、下方から突き出した竹から聞こえるというわけです。水が
流れている石の部分にモミジがしがみついていました。秋の風情ですね。
今日は水量が少なく、なかなか聞こえませんでしたが、それもまた良し・・・

成田山公園の紅葉
成田山公園の竜樹の池の付近の紅葉もまた見事でした。贅沢な時間です。

現代はカメラやコピー機の普及により、「模写」や「複製」がとても簡単に出
来る時代です。ひと昔前、それらの機械が存在しなかった時代はひたすら
その対象を模写するという作業が続けられていた事でしょう。書の世界でも
双鉤槇墨(そうこうてんぼく)というものがあり、筆跡を敷き写し、輪郭をとっ
て籠字をかき(双鉤)その中に墨をぬる(槇墨)という模写方法があります。
大変な作業ですが、その様な作業を通して人々に「物を観る『眼』」が養わ
れ、その『眼』が様々な芸術作品を産み出す「土壌」になっていったと思うの
です。やはり便利な物には大きな落とし穴があるような気がしてなりません。

作品を創る現代の我々にとって、用具・用材は昔よりもはるかに多種多様
な物が手に入ります。しかし、昔の方々の作品を越える優れた作品がなぜ
少ないのでしょうか。それは我々が「物を観る『眼』」をしっかり育てていない
からではないでしょうか。(「我々」と言ったら皆さんに失礼だと思いますが)
「いいものを観なさい」私がお世話になっている先生が必ずおっしゃる言葉
です。その言葉の持つ本当の意味を額堂の彫刻から教えられたような気が
しました。もう少し真摯に「書」を勉強しよう、そう感じた秋の一日でした。